2022年2月

「自治体経済安全保障研究会提言を小林経済安保大臣に手交。【提言全文掲載】」

横浜、川崎、相模原の地方議員、関係職員などで開催した自治体経済安全保障研究会の提言を、経済安全保障法案が閣議決定した今日、小林大臣に手交、ご説明することができました。

ルール形成戦略議員連盟事務局長で現在、国土交通副大臣を務める中山のりひろ代議士ご同席の下、研究会幹事を務める、矢沢川崎市議、阿部相模原市議とご説明をさせていただきました。

小林大臣からは提言に高い評価をいただき、地方が抱える制度的な課題と、自治体が経済安保を進める意義、難しさも共有いただきました。

提言について、以下全文掲載します↓


自治体経済安全保障研究会提言書

令和4年2月

米中競争の激化を受け、国際的に「経済安全保障」を巡る対応が各国で加速化している。日本でも岸田政権は世界初の経済安全保障大臣を任命したほか、現在「経済安全保障促進法」の準備を着々と進めている。一方で、現状日本で取られている組織編成や新たな政策は、中央省庁がその主眼に置かれている。

「経済安全保障」を「我が国の独立と生存及び繁栄を経済面から確保すること」と暫定的に定義 した場合、その確保には国だけでなく、地方自治体レベルでも対応する必要がある。このような問題意識を元に、神奈川県内政令指定都市である横浜・川崎・相模原の議員を中心に「自治体経済安全保障研究会」を立ち上げ、議論を重ねてきた。

従来、地方自治体は「安全保障」の担い手ではないため、「経済安全保障」に関する対策は取って来ていなかった。しかし、地方自治体は上下水道・港湾・医療・鉄道・道路など、国民や市民の生命や安全にかかわる基幹インフラを多く保有・運用している。また、自治体は地域経済の活性化に向けて海外企業誘致を通じた産業育成なども積極的に行ってきたが、近年先端技術を含む知的財産の海外流出リスクが可視化されてきている。更に、自治体は姉妹都市をはじめとする独自の国際交流を行っているほか、市民の中には外国人も多くおり、外国人との共生が政策の要にある。

地方自治体はまさに「経済安全保障」の最前線にいると言っても過言ではない。
よって、どれだけ国が取り組みを進めても、地域経済の現場である自治体が経済安全保障を正しく理解しなくては、対策は不十分となる。これからの日本の経済安全保障を強化する上で、自治体レベルにおける新たな取組が求められている。

横浜・川崎・相模原をはじめとして、全国の地方自治体が経済安全保障を守っていく上で必要となる施策について、「国への要望」、及び、「地方自治体の努力」に整理し、以下提言する。

1.国への要望

① 全国自治体向けの海外企業誘致基準の法制化・ガイドライン作成

地方自治体には、従来の海外企業誘致による産業創出のニーズと、新たに生じてきた経済安全保障上の懸念である技術基盤流出の懸念(情報・人)のバランスを取る必要がある。

しかし、経済安全保障上の基準が地方自治体の自主性に任されてバラバラになってしまうと、経済安全保障上の規制を最も緩く設定した地方自治体に海外からの投資が集中してしまう蓋然性が高い。

このような産業育成と経済安全保障の両立に向けて、日本政府が全国の自治体に対して、適切且つ統一的な態度を促す「海外企業誘致基準の法制化」、あるいは、「海外企業誘致ガイドライン」の作成を要請する。

また、企業誘致に対する規制強化に伴い地域に与える損失等については十分に考慮し、適切な支援策とセットで進めることを要望する。

②地方自治体固有の経済安保リスクの洗い出し、共有化

経済安全保障の視点から、各地方自治体が管轄圏内に存在する固有の経済安保リスクを洗い出し、対処方法を講じる必要があるが、自治体ではそのリスクが分からない。

例えば、海岸沿いの自治体であれば港湾を巡るリスクが、山林や水源地のある自治体では土地保有や利用に関するリスクが、工業地帯では技術流出に関するリスクなどが考えられるが、それらの事例の共有と共に、基準を示していただきたい。

③日本のインテリジェンス機関と自治体行政との情報連携体制の構築

海外都市との経済発展協力や商談、外国企業との取引や連携にあたり、経済安全保障上のリスクに対する情報が不可欠となっている。

しかし、民間企業、特に中小企業にとっては、経済安保リスクの高い海外企業・研究機関のリストや、技術・人材流出のリスク、国際海上輸送航路において安全保障上の脅威となり得る国の港と言った情報を独自で包括的に取得・分析することは困難を極める。

このような状況を受け、現在日本のインテリジェンス機関である警察や公安調査庁などが経済安全保障を担当する新たな部署を多く立ち上げている。その一方で、これらの機関が具体的にどのような役割分担になっており、地方自治体の行政機関がどのような問題をどこに問い合わせれば良いのかが明確になっていない。

以上を踏まえ、地方自治体の行政機関が日本のインテリジェンス機関と円滑に情報連携できるような体制の構築が必要である。

④ 守るべき先端研究の明示

地方自治体の中には、独自に大学や研究機関を有し、先端技術の開発や研究に取り組んでいる自治体も多く、様々な国々との共同研究や開発事業も行われている。

これら研究開発においても、経済安全保障上の観点を浸透させていくことは重要である。

例えば、自治体によっては研究施設を貸し出す際に、詳細な研究内容や研究開発体制等の届出義務も無く、経済安全保障上の脅威となり得る国々との共同研究等に対する規制も無い。国においては、国家として守るべき先端研究・重要技術分野を示し、特定分野における研究機関等の共同研究や開発等に関する指針を策定していただきたい。

⑤ 地域に根差すものづくり企業と国内大企業とのマッチング支援

国内には先端技術を有している、または大企業の競争優位を下支えしている中小企業が多く存在する。

一方で、その存在が知られていなく、営業や広報活動の体力不足によって金融機関や取引先において適切な将来性が認識されず、財政難や後継者問題により事業承継に失敗し、人知れず海外企業に企業買収されてしまっている事例が少なくないと市民から聞く機会が少なくない。

本来は国内大企業から需要があるはずの技術や製品が、日本国内でしかるべき所に情報が行き届いていないために海外企業に買われてしまっているのであれば、それは日本の経済安全保障の基盤となる経済力を維持する上で大きな機会損失となる。

このような事態を回避するため、地域に埋もれている先端技術保有企業を各自治体が把握してそれをインテリジェンス機関や金融機関と共有し、国内大企業とマッチングさせる支援制度の構築をお願いしたい。

2.地方自治体の努力

① 地方自治体における経済安保窓口の設置

複雑化する経済安全保障環境への対応として、各地方自治体が経済安全保障上の窓口を設置する必要がある。こうすることで国やインテリジェンス機関との連携が一本化され、迅速且つ効率的な情報共有が可能となる。

この際、地方自治体は一方的に国からの情報を受けとるだけでなく、自治体内の非上場企業や中小企業が持つ先端技術やこれら企業に対する海外企業からのアプローチといった、自治体固有の経済安保リスクについて適宜国へと共有することで双方向の情報交換となることが望ましい。

② 地元企業に対する不正競争防止法の理解促進

先端技術だけでなく、既存の競争優位が不正な方法によって流出させないことも経済安保においては極めて重要な取り組みである。

これの抑止力として、不正競争防止法が効力を発揮できる形で企業内の情報管理体制を整備することは不可欠だが、中小企業においてはこの法律の理解が十分とは言えない。よって、地方自治体は地元の中小企業に対して不正競争防止法の理解と浸透を促す啓発活動を強化し、情報管理体制の構築を支援する役割も担っていくことが望ましい。

③ 自治体行政の人材育成

「経済安全保障」は新しい分野であるため、各地方自治体で経済安保に関連する業務に携わる人員の人材育成が必要である。

経済安全保障上のリスクに関する認識を高めると同時に、情報収集・分析能力を培うための人材育成が必要とされている。具体的には、経済安全保障を巡る国際動向や、国レベルでの経済安保政策が地方自治体にどのような影響を与えるかの分析、自治体レベルにおける経済安保リスクを特定する能力の向上などが挙げられる。

④ 外部専門家との連携

国内外の経済安保リスクに関する最新情報の取得や自治体で取り組む経済安保リスク対策へのフィードバック、また、海外企業誘致の審査会などに経済安保の視点を入れて行く上で、各地方自治体が外部の経済安保専門家と積極的な連携を行っていくことが望ましい。

⑤ 従来取ってきた政策の経済安保視点からの見直し

各地方自治体が取ってきた様々な政策に対して経済安保の視点から見直しをすることで、今後の経済安保の視点を加味した政策立案の在り方を創り上げていく必要がある。例えば、海外企業誘致政策に経済安全保障上、リスクが高い企業を誘致してこなかったかどうか、姉妹都市関係をベースとした技術協力などで問題があるものはないか、といった点が考えられる。

⑥ 基幹インフラ・自治体保有財産の外国資本比率に関する状況把握

各地方自治体は、地方自治体が経営権を有する上下水道・港湾・医療・鉄道・道路など市民・国民の生命や安全に関わる基幹インフラや、地方自治体が保有する財産の貸付先や分譲先の企業に外国資本がどれほど入っているかの現状把握を行う必要がある。

⑦ 地方自治体間の経済安保連絡協議会の設置

各地方自治体が経済安保リスクについて情報共有・連携する、全国規模の「自治体経済安全保障連絡協議会」の設置に向けて取り組むべきだ。

この協議会の役割としては、明らかになった各地方自治体特有の経済安全保障リスクに関する情報や対処方法に関するベストプラクティスの共有、「経済安全保障促進法案」のような地方自治体に影響を与える法律について議論をして政府に統一した意見を出すための議論の場の提供、顕在化した新たな自治体経済安保リスクに対する国への報告などが考えられる。

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