2012年6月

「マニフェスト大賞スタンダード~マニフェスト大賞への思い~」

小学生で「三権分立」を学び「議会は立法をするところなんだ」と知り、調べてみると、当時(20年前)の国会はまったく議員立法をしてなかったことが分かり、「この人たち全然仕事してないじゃん!」とショックを受けました。

また、大学で地方自治法を学びましたが、地方議会の議員立法の数が国会以上に「まったくない」ことにさらにショックを受け、「この人たち、よくもまあぬけぬけと『政治主導』とか言ってられるなぁ」と怒りさえ覚え。大学院では、同級生で、50代で、岩手の農家で、江刺市議会議員だった佐藤邦夫さんと「俺たちでやってみよう」と発起し、全国で初めての「地産地消条例」で、江刺市議会では最初で最後(2006年に合併して、いまは奥州市)の「議員提案条例」である、「えさし地産地消推進条例」の制定に関わることができました。

当時大学院生だった僕は教科書や事例集を必死に読みながら、邦夫さんは体と政治力をフルに使って、「絶対にやってやるんだ!」という気持ちで立法作業にまさに没頭し、みごと全会一致で制定されました。議会の帰り道、邦夫さんが言った「初めて議員らしいことをした、ありがとう」という言葉とともに流れていた涙が、今の僕の原点になっています。

その後、早稲田大学マニフェスト研究所に就職し、仕事として地方議会改革のお手伝いをさせていただくことになりましたが、最初の仕事が「マニフェスト大賞」の創設でした。千葉県流山市議会の松野豊さん、東京都議会の伊藤悠さん、毎日新聞の川俣享子さんら、当時「この人たち本当に大丈夫かよ?」と思っちゃうような若い人たちの中で、もっと若い僕が担当になり、2011年にがんで亡くなった群馬県みどり市議会の蓮孝道くんも、当時スタッフとして一緒に汗をかきました。全国の議会に対する応募資料の発送作業など、今や完全委託になっていますが、当時は僕らや、学生やなんと複数の都議会議員までもが雑然とした部屋にこもってぶつぶつ文句言いながら、志だけを頼りに作業をしていました。

また、今でこそ、多くのご協力をいただき、天下の六本木ヒルズの49階で授賞式を行えるようになりましたが、第1回目は毎日新聞本社のうす暗い地下1階。ただ、7年前の2005年11月の授賞式当日、あの竹橋の毎日新聞本社ビルの地下に、当時(今も)議会改革の最前線を走っていた北海道栗山町議会、三重県議会、北海道福島町議会、岩手県議会や全国からの受賞者の皆さんが一堂に会した時、「地方の地道な取り組みから日本の政治が変わる!」と本当に実感しました。

マニフェスト大賞の基準を全国に広げ、地方政治の活性化を

マニフェスト大賞授賞式には、全国からトップランナーが集まります。

学生も含め、僕らスタッフはそのトップランナーの活躍を、これまで6回も間近で見ることができました。僕らはまさに「マニフェスト大賞世代」であり、全国的にはまだまだ事例が少ないだろうマニフェスト大賞の受賞レベルが、僕らにとって幸か不幸かスタンダードになってしまいました。“マニフェスト大賞スタンダード”です。

僕は2011年5月に当選し、横浜市会議員になって1年が経過しました。自民なのに、普通に「NO選挙カー運動」(第6回マニフェスト大賞優秀賞受賞)をやってしまったり、毎週木曜22時、日の出テレビというインターネットテレビを欠かさずやっていたり(第6回最優秀コミュニケーション賞受賞)、やはり、「普通」からみるとちょっとおかしいかもしれませんが、これがマニフェスト大賞のすごさで、やってる自分は至って「普通」です(笑)。

また、北川正恭教授含め、多くの識者の皆さんから「一番古い」と言われていた横浜市会は、角度を変えて考えてみると、マニフェスト大賞の発展と同期して、どんどん進化を遂げていると思っています。僕がスタッフのころから活躍していた先輩の議員たちが、中小企業振興基本条例の議員立法(第5回優秀賞)をしたり、マニフェスト大賞実行委員長の黒川勝議員(当時1期目)がまとめる努力をして、なんと自民党横浜市連で自民では全国初の議員立法マニフェストをつくってしまったり(第6回審査委員会特別賞)。

僕が入ってから、この6月議会でも、増え続ける資源ゴミの持ち去りに対し20万円の罰金を付けた「持ち去り対策条例」が横浜市会で初めて委員会提案で成立し、また、自民・公明両会派共同提案による「横浜市市民恊働推進条例」案が上程され、審議されています。

オンブズマンや議会改革の会の皆さんからは「まだまだ閉鎖的」と言われるかもしれませんが、中にいると、その変革の空気を日ごとに感じています。今、検討している議員の役割などを明文化した議会基本条例も、同条例を最初に制定した栗山町議会の単なるカーボンコピーには「絶対にしない」と思いますし、大都市における議会制民主主義の在り方を、条例を通じ議論しています。大切なことだと思います。

僕らマニ大世代のミッションは、この“マニフェスト大賞のスタンダード”を「善政競争」により“全国のスタンダード”にして、日本の地方政治を底からどんどん活性化していくことです。天国にいる蓮くんの分も、まだまだこれからしっかり頑張っていきたいと思います。

政治山掲載

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